大井川鉄道 SL復活30周年

大井川鉄道:SL復活30周年、きょう記念イベント /静岡

 ◇全国の廃線車両を再活用、走行距離は地球27周分
 蒸気機関車(SL)が走る路線として全国に知られる大井川鉄道(榊原昌夫社長)が9日、SL列車の復活から30周年を迎える。全国で廃線が続いたSLの車両を有効利用しようと始め、30年間の走行距離は地球を27周する約109万キロ。乗客も537万人に上った。9日は新金谷駅で、子供1日駅長などのイベントも開く。
 戦前には全国で8700両以上あったといわれるSLは60年代以降、次々と姿を消した。同社は実際に車両を動かしながら保存する「動態保存」に取り組み、76年7月9日にタンク型の「C11」を金谷―千頭駅間(39・5キロ)で最初に運行させた。その後も旧日本軍がタイで使っていた「C56」、同型としては最後の1両の「C10」などを追加し、現在では6両を走らせている(うち2両は修理中)。
 SLには整備や運転の教本が残っておらず、同社はノウハウをすべて口伝や自筆のノートで伝えている。現在の整備士・運転士は全員生え抜き社員。担当者は「SL技術が残っているのは全国でもほとんどない。修理も基本的に自前で部品を調達するしかないが、その価値があると信じている」と胸を張っている。
 記念イベントでは子供駅長のほか、千頭駅のSL資料館も無料開放される。館内では、長年にわたってSL写真を撮り続けてきた愛好者ら13人による写真展も開かれている。25年以上もSL写真を続けている川根本町の公務員、坂下孝広さん(38)は「シーズンには家族に文句を言われてもカメラを担いで行く。煙や音など人が動かしている様子に強く引かれる」と話した。

毎日新聞 2006年7月9日]