議員無料パス 24社取りやめへ

<議員無料パス>私鉄24社「やめます」 負担が大変

 国会議員がJR以外の私鉄や公営交通に無料で乗れる「民鉄乗車証」について、これまで乗車できた鉄道会社の2割以上の24社が今月、「経営が苦しいのに特別扱いはできない」などを理由に便宜供与を取りやめた。乗車証は全国会議員への便宜供与として約60年間続いているが、日本民営鉄道協会(民鉄協)は今後、衆参両院に対しプリペイドカード購入など制度改革を要請する方針だ。批判の多い議員特権の一つが揺らいでいる。
 衆参両院などによると、民鉄乗車証は1946年に衆院議長から民鉄協の前身である鉄道協会の会長に「国鉄(当時)の無料パスと同様の配慮を」と依頼があり、以後続いている。民鉄協が毎年10月、全国会議員を対象にした1年間有効の乗車証を発行する。
 乗車証を使える会社は、民鉄協の加盟社を中心とする104社だった。しかし更新期の今月、民鉄協が経営難の中小会社や、高尾登山鉄道(東京都)、大山観光鉄道(神奈川県)、立山黒部貫光富山県)などレジャー路線の会社計24社を対象から外すことを決めた。関東・関西の大手や地下鉄などは継続している。
 民鉄協総務広報部は「地方の中小の会社は経営が苦しいところが多く、便宜供与をやめることにした。公務と無関係のレジャー路線も脱退させてもらう。今後はパスネットなどのプリペイドカードを衆参両院に買い上げてもらうなど、制度の見直しをお願いしていきたい」と話している。
 紙製カードの乗車証は、改札口で見せれば自由に列車に乗ることができるので、国会議員が金額に換算してどの程度使用しているかなど、利用実態は把握できないという。
 衆院は「私鉄の好意で行われており、予算措置はしない」。参院は「参院だけでは決められない。(制度を変えるにも)衆院と歩調を合わせなければならない」と話す。
 乗車証を巡っては「議員がただで乗っているのに、電車通勤で庶民性をアピールする事例もある」(元国会議員秘書)などの批判も出ている。
 一方、JRも無料パスを国会議員に発行しているが、国鉄民営化以後は、衆参両院がJR6社にパスの購入費を支払っている。

毎日新聞 2006年10月25日]