都電がレトロに

こぼれ話:レトロ都電の「おトク」感 /東京

 東京都交通局が、路面電車都電荒川線のイメージアップ作戦を展開する。キーワードは「レトロ」。
 今月末、昭和初期の東京「市電」をイメージした「9000型」1両を導入する=写真・同交通局提供。新車は14年ぶりなので、思い切って80年前のモダンデザインを採用。特注品なので値段は約2億円。普通の電車が約1億円だから、作戦への意気込みがわかる。東側の始発駅・三ノ輪橋には昭和30年ころをイメージした時計塔、ガス灯風の照明などを整備する。
 試運転中の車両は、上がクリーム色、下がエンジ色。二重屋根と乗降扉横の丸窓が特徴。車内の床と壁は木目調。手すりは真ちゅう製。都電で初めて、運転士に万一のことがあった時の停止装置と時速40キロ制限装置を採用した。
 全長約12キロの同線利用者は1日約5万4000人。微減だが黒字経営。同線は74年、都電2路線の専用軌道部分を中心に存続・一本化し唯一の都電「荒川線」の名で再出発。モータリゼーションの荒波を乗り切った。今は「環境に優しく便利」と見直され、レトロ作戦が決まった。
 私は西側の起点・早稲田から従来型の都電に乗ってみた。学習院下の付近、直線の続く上り坂は、電車が空に向かっていくようで、すばらしい前面風景だった。全30駅を1時間弱で走り抜けて片道160円均一という「おトク感」にも感動した。子供は半額だ。
 乗り降り自由の一日乗車券は400円だから、今度はおトクなレトロ都電で、沿線をじっくりと探訪したい。

毎日新聞 2007年5月1日]