高千穂線 運行再開を目指す

高千穂線廃線ひとまず回避 トロッコ社 会社存続決定 安堵と冷めた声交錯 再開計画は年明け見通し

 神話高千穂トロッコ鉄道高千穂町)は10日、最大株主の同町観光協会からの会社清算の要請を拒み、経営陣を刷新して高千穂線の運行再開を目指すことを決めた。安堵(あんど)の表情を浮かべる沿線住民もいるが、トロッコ社の新体制の発足と練り直される再開計画が打ち出されるのは年明けの見通しで、再開を危ぶむ声もある。依然、廃線の瀬戸際に立たされたままだ。
 高千穂線全線復活熱望県民会議の粟田利枝議長=日之影町=は「まずはホッとした。全国からいただいた支援金を生かしていく道が残った」と胸をなで下ろした様子。同会議の藤木哲朗事務局長=高千穂町=も「全国には廃線から復活した鉄道も複数ある。全線再開は理想だが、まずは短い距離でも走らせられるよう町民、市民の機運を高めたい」と前向きに話す。
 個人株主で出資を継続する同町出身の作家、高山文彦さん(49)=東京都世田谷区=は、募金など地元の高千穂町で支援が広がらなかったことを踏まえ、「新経営陣は公民館単位で住民とひざをつき合わせて話し、理解を求めていくべきだ」と話していた。
 だが、地元住民には冷ややかな見方も。高千穂町の主婦(73)は「運行再開を望んでいるし会社存続も喜ばしいが、新体制で本当に再開を実現できるかとなると、厳しいと思う。町内でさらに支援金を出す人はそう多くはないのではないか」と複雑な表情だった。
 また、同線を所有する第三セクター高千穂鉄道(同町、TR)の社長を務める内倉信吾・高千穂町長はトロッコ社がTR社からの経営引き継ぎを断念したことについて「寂しい思いもあるが、トロッコ社が熟慮された上での決断と受け止めている」と話した。新体制となるトロッコ社への協力については「新しい経営陣に話しを聞いた上で考えたい」と述べるにとどまった。
 東国原英夫知事は「今後のトロッコ社のやり方、行方をよく見守っていきたい。今、県がどうこうするとか、どうかかわるとかはまだ言えない状況だ」と話していた。

西日本新聞 2007年12月11日]