仙台空港アクセス鉄道 山形への臨時列車実現へ

「東北の玄関口」へ結束 山形県仙台空港鉄道出資

 山形県の斎藤弘知事が9日、仙台空港アクセス線仙台空港―JR仙台駅)の運営主体である第三セクター仙台空港鉄道」への出資を決めた。出資の打診を受け、県の判断を注視していた山形県内の企業の背中を押す効果も期待されるなど、今回の決定は山形、宮城両県の結び付きを強めることになる。
 山形―仙台空港駅の臨時列車は実現する見通しになったが、定期的な直通列車の運行など解決すべき課題は残されたままだ。仙山線の機能強化、利用促進策は緒に就いたばかり。関係者の不断の努力が求められている。
 山形県内の有力企業幹部は9日、県の決定を受け「県民のためになるなら、出資を検討する価値は十分ある」と明言した。仙台空港鉄道に出資している県内企業は、荘内銀行鶴岡市)のみ。山形県の出資金は5000万円だが、県というバルブが開くことで、背後にある民間から、それ以上の“水”が流れ込む―。宮城側には、こんな期待もある。
 アクセス鉄道は、県ごとに整備されてきた社会資本を共同利用するモデルケースでもある。隣県から自治体のみならず、民間も資金協力する体制が構築できれば、文字通り「東北の玄関口」としての仙台空港の中枢機能は高まる。
 一方、山形県が出資する契機になった臨時列車だが、その後の定期的な運行は担保されてはいない。仙台駅のホーム、ダイヤ、仙山線の複線化など、山形―仙台空港駅の日常的な直通運転には高いハードルがある。バス路線との競合にさらされ、存在感が薄れている仙山線にもう一度光を当て、需要を掘り起こしていく努力は不可欠だ。
 臨時列車の運行について、山形県は昨年末、JRから難しいと回答され、「出資は困難」との判断に傾きかけた。そこで宮城県は今年に入り、JRに運行を強く要請するなど、両県は連携を密にして、実現にこぎつけた。こうした実績こそ、「仙山交流」の財産になったのではないか。

◎仙山圏観光へ波及期待
 仙台空港アクセス線の運営主体、第三セクター仙台空港鉄道」に対する山形県の5000万円出資が9日決まり、宮城、山形両県の経済界には、仙山圏の一体的な観光振興などへの期待が広がった。
 有数の観光地、山形市の山寺や蔵王温泉は今、韓国をはじめ海外の観光客誘致に力を入れる。山寺観光協会遠藤正明商工事務部長は「仙台空港は東北の玄関口で、山形のかかわりが深いほどPRも期待できる。山寺を含む東北観光全体の盛り上がりにつながれば」と波及効果に期待する。
 「県の出資が仙山交流促進につながれば喜ばしい」と語る山形県商工会議所連合会の山沢進会長は、アクセス鉄道とJR仙山線の日常的な直通運転の実現を強く望んだ。
 山形県同様、出資要請を受ける山形市は態度を決めていないが、市川昭男市長は「県の出資は両県の交流促進への投資だ」と高く評価。「相互直通化を含め、仙山線の機能強化につながってほしい」と話した。
 アクセス鉄道は来月18日開業。秒読み段階に入った。仙台空港国際化促進協議会の津島秋夫幹事長は「JRを経由した周辺地域からのアクセス向上を、航空路線拡大へと発展させなければ」と力を込め、空港の利用増にもつながる隣県・山形の支援を歓迎した。

河北新報 2007年2月10日]