N700系 報道陣試乗会

新型新幹線「N700系」試乗リポート ビジネス客に照準

■パソコン利用環境も完備
 東海道・山陽新幹線に新しい新幹線車両「N700系」が7月1日に登場する。JR東海JR西日本は23日、東京駅から博多駅まで報道関係者約200人を乗せた試乗会を開催した。最新技術を結集し、移動の快適性やビジネス客の利便を追求したという。新しい新幹線の実力は-。

≪消費電力低減≫
 真っ白な車体にブルーのライン。新幹線でおなじみの車体カラーだが、これまでと異なるのは新しい「顔」である先頭車両だ。“エアロ・ダブルウイング”という「荒鷲が羽を広げたような」形状の先頭車両は、空気抵抗を最低限に抑え、快適な乗り心地と省エネを実現するもの。「N700系」は、現行「700系」よりも電力消費量を東海道区間で19%、山陽区間で9%低減しているが、この先頭車両の採用も環境負荷低減に役立っている。
 普通車両は、明るく開放的な空間にブルーのシートが鮮やかだ。3列シートの両側2席の幅を従来比10ミリメートル広げ、新開発の複合バネ構造を採用したクッションで、普通車ながら座り心地はまずまずといったところ。
 一方、グリーン車両は、穏やかな明かりとナチュラルなカラーで落ち着いた雰囲気。「シンクロナイズド・コンフォート」という高機能リクライニングシートを採用。背もたれを下げると座面も連動して下がるため、角度を変えるたびに座り直すことなく快適な座り心地が得られる。
 車内は、これまでのような喫煙車、禁煙車の区別はなく全車両禁煙。喫煙したい人は、車内に設置された6カ所の喫煙ルームを利用することになる。強制排煙装置や独自開発した光触媒脱臭装置を設置し、外部への煙やにおいの流出を防ぐ。各喫煙ルームは2~4人が入ればいっぱいというスペースで、喫煙者にとっては、少々手狭に感じるかもしれない。

≪無線LANも≫
 車内の快適性だけでなく、「N700系」で注目されるのはビジネス環境だ。
 シート前に設置されたテーブルはノートパソコンも置ける大きさで、グリーン車の全席と普通車の窓側の座席にコンセントを設置し、新幹線での移動時間も惜しいというビジネスマンの仕事をサポートする。コンセントは、全1323席中753席で利用可能だ。
 高速走行時にもインターネット接続できる無線LAN(構内情報通信網)対応を予定しているが、サービス開始は2009年春。新幹線の中にオフィスや家庭とほぼ同じネット環境を再現し、ビジネスやエンターテインメントを楽しむのはもう少し後になる。
 「ただいま『車体傾斜システム』で走行しております」
 掛川駅付近でこのようなアナウンスがあった。「N700系」は、東京-新大阪間をこれまでよりも5分短い2時間25分で結ぶ。1992年に「のぞみ」が誕生して以来、15年ぶりの時間短縮だ。それを実現したのが、新幹線として初めて搭載した「車体傾斜システム」だ。空気バネで車体を1度傾かせることで、曲線でも速度を落とさずに走行できる。これにより、東海道区間の60カ所で最高時速270キロメートルで走行できるようになった。もっとも、座席に座っていると1度の傾斜を感じることは難しい。
 7月1日には、東海と西日本を合わせて「N700系」を6編成投入。上下合わせて8本を運行する。さらに、初めての品川発「のぞみ」を午前6時に設定、これにより、現在の6時東京発よりも11分早い8時19分に新大阪に到着でき、さらにビジネスの足としての利便性が向上する。「N700系」を09年度までに東海が42本、西日本を12本の計54本を導入する予定だ。
 阿久津光志JR東海専務は「すでにN700系は50万キロメートル、地球12周半の確認試験を行っており、営業運転に向け順調に準備が進んでいる」とし、快適な新幹線の旅の提供に自信をみせる。

[フジサンケイ ビジネスアイ 2007年5月24日]