仙台市営地下鉄 開業20周年

仙台市地下鉄きょう開業20周年 利用伸び悩む

 仙台市地下鉄南北線が15日、1987年の開業から20周年を迎えた。総乗車人員は11億人を超え、2008年度には単年度収支が黒字に転換する見通しだ。仙台都市圏の貴重な足として定着した一方、近年の乗客数は伸び悩みの傾向にある。15年の地下鉄東西線開業を視野に、バス路線やマイカー利用者を含めた圏域全体の交通政策の再構築が求められている。

●経営の推移
 20年間の平均乗車人員と単年度収支の推移はグラフの通り。順調に伸びてきた一日平均乗車人員は95年に約16万7000人を記録したが、以後は頭打ちとなり、ここ数年は微減に転じている。
 当初の需要予測(一日当たり)は約22万5000人で、20年後には33万人を超える計画だったが、半分にも達していない。
 開業時、02年度を目標とした単年度収支の黒字化は、08年度にずれ込む見通しだ。借入金の利払いと減価償却費の減少で年々、赤字幅は縮小しているが、乗客の伸び悩みが黒字転換を遅らせる要因になった。
 市交通局営業課の庄子清治課長は「人口の増加傾向が鈍化したのに加え、バスの乗り継ぎ客やマイカー利用者を思うように呼び込むことができなかった」と説明する。

●沿線の開発
 南北線周辺の人口変動を見ると、市全域の人口の伸びが10%台なのに対し、沿線北部は30%強と大幅に増加した。泉中央駅周辺にビルやマンションなどが立ち並んで副都心を形成。97年には、仙台スタジアム(現ユアテックスタジアム仙台)も完成して需要増につながった。
 沿線北部と南部の利用者の比率は、7対3ほどとされる。市南西部、名取市などの利用者の掘り起こしが進んでいない。あすと長町(太白区)の再開発や市立病院移転による効果を、どれだけ乗客増に結び付けられるかが今後を占う。
 仙台市は、中心部への直行バス路線を減らして地下鉄への乗り継ぎ路線を強化するとともに、駅近くに駐車場を用意する「パークアンドライド」を推進中。乗り継ぎの手間を軽減するため、IC乗車券の導入なども検討している。
 市都市整備局は「バスも含めた交通体系を見直し、乗り継ぎしやすい下地を再構築する必要がある」(交通政策課)と話す。

東西線の効果
 仙台市南北線に続く地下鉄路線となる東西線について、15年度の開業を目指している。総事業費は2735億円で、今年2月に建設工事がスタートした。
 東西線は、市内いずれの地域からも中心部に30分で移動できる、市の「アクセス30分構想」の実現に向けた骨格軸。基盤が整うことで、市は南北線への相乗効果も大きいと見越す。東西線開業で、南北線の平均乗車人員は2万人増の18万人と予測する。
 東北大大学院情報科学研究科の徳永幸之・准教授(公共交通論)は、南北線について「20年間で着実に地域の足として定着しており、今後も底堅く需要が続くだろう」と評価するとともに、「東西線建設で移動可能な範囲が広がれば、地下鉄を利用する市民も増える。集積度が低い都心の再生を一体で進めることが重要だ」と指摘する。

河北新報 2007年7月15日]