岩手・宮城内陸地震 発生から1週間

岩手・宮城地震 相次ぐキャンセル…周辺観光地に影響深刻

 岩手・宮城内陸地震の被災地周辺で、観光産業への影響が深刻化している。施設の損壊などはなくても、余震や新たな土砂災害への懸念が客足を遠ざけているようだ。地域によっては被災者への配慮から安全をアピールしづらい側面もあり、悩みは深い。 被害の大きかった宮城県栗原市に隣接する大崎市鳴子温泉では、発生後に宿泊のキャンセルが相次いだ。鳴子温泉旅館組合によると、県境で接する山形県名産のさくらんぼ狩りと組み合わせたこのシーズンの人気ツアーの団体客も失うなど、6~7月分で計413件、延べ約2800人分のキャンセルがあった。4000万円近い売り上げに相当するという。
 温泉街には閑古鳥が鳴く。土産店を経営する女性(73)は「地震からさっぱり人が来ない」と力なく笑う。同市観光農政課の大山誠一課長は「近くに被災者がいるのに『鳴子だけは大丈夫だから来てください』とは言えない」と商工関係者の複雑な心情を推し量る。
 大崎正和組合長(56)は「2、3カ月はこの状態が続くのでは」と危惧(きぐ)する。その一方で、避難者をおもんぱかり避難所に源泉を運ぶことを計画、「風評被害対策はそれからです」と話す。
 震源地から約50キロ離れた岩手県花巻市でホテル・旅館5軒を経営する「花巻温泉」には19日までに約2000人からキャンセルがあった。被害は「皿が10枚割れた程度」だが、キャンセル客からは「余震が心配」「他県に行く」などの連絡が多かったという。
 震源地に近い奥州市の温泉宿泊施設「ひめかゆ」では、宿泊客など約3800人がキャンセル。営業休止中だが「余震が怖い」との理由が多かった。県観光課は「余震や被害を受けた旅館の情報をきっちり伝えることで、他の地域は大丈夫だと分かってもらえるはず」と話している。

毎日新聞 2008年6月20日]