東北新幹線 開業25周年

東北新幹線 1番列車運転の小野武司さん、感慨深げ

 東北新幹線が開業して四半世紀を迎え、元JR東日本運転士の小野武司さん(66)=盛岡市=の感慨は深い。この日走った初代「やまびこ」200系は25年前のこの日、小野さんが盛岡発大宮行き1番列車で運転した列車。「時間通り安全に走るのに精いっぱいだった」と当時を振り返る。
 当初、盛岡発の1番列車には首都圏の運転所の運転士が乗る話もあったが、盛岡運転所の熱意で運転士・車掌は小野さんら全員岩手県出身者で運行することに決まったという。
 開業日、列車が盛岡駅に滑り込むと、ホームは歓迎する住民らで埋まっていた。小野さんは高木文雄国鉄総裁(当時)と並んで花束を受け取り午前7時15分、仙台へ。緊張して座った運転台からは、線路沿いで日の丸を振って歓迎する人の姿が見えた。定刻通り同8時31分、仙台に到着、運転を引き継ぎ、妻詔子(のりこ)さん手作りの弁当を食べて一息ついた。夕方帰宅して、妻、子供2人とケーキを食べて祝った。
 小野さんは62年に旧国鉄に入社し、80年に東北新幹線の運転士第1期生に選ばれた。新幹線を初めて運転した時は、運転台にたばこを立てても倒れないほど振動が少ないのに驚いたという。
 以来、東北新幹線で運転士一筋。最終乗務は97年3月22日、秋田新幹線の開業日だった。初めて乗ったのと同じ200系で、仙台から盛岡まで走った。盛岡駅まであと数キロ、左カーブを曲がると正面に見える岩手山に「さよなら」と告げた。人身事故ゼロで勤め上げられたのが自慢だ。
 小野さんは現在、JR関連会社で盛岡駅ビルの警備員をしている。23日は、25周年記念で走ったなつかしい200系をカメラに収める。

毎日新聞 2007年6月23日]