茨城交通湊線 第三セクターへ

茨交湊線の存廃問題:三セク方式で存続 ひたちなか市、県と合意--来年4月 /茨城

◇新会社で運行開始
 茨城交通湊線(勝田―阿字ケ浦、14・3キロ)の存廃問題で、同交通、ひたちなか市、県の3者は27日、鉄道部門を分社化し、市が出資する「第三セクター」方式で存続させることを正式に合意した。08年4月にも新会社による運行が始まる。
 同交通と市の出資金はおおむね1対1を想定。市の出資部分には市民有志や法人による寄付や出資も視野に入れている。市が実際に出資する額の3分の1程度は県が補助する。
 同交通は安全運行のために不可欠な設備投資に08年度から5カ年で合計5億4000万円が必要だと試算していた。この部分は、国の鉄道・軌道近代化設備整備費補助制度を活用し、国、県が3分の1ずつ負担し、残る3分の1は市が補助制度を創設して全額負担する。
 また同5カ年で鉄道運営で1億1000万円の経営支援が必要としていたが、県と市が路線維持費や電路維持費などの修繕費を補助するほか、市は固定資産税相当額の補助もする。同交通が光ケーブル事業者に敷地を提供している収益事業は新会社に組み入れる方向だ。
 湊線は1960年代には300万人を超える利用者があったが、下落に歯止めがかからず、06年度は70万828人と過去最低を記録。今後5カ年の収益予想はこうした状況を反映し、毎年2・4~2・5%で利用者が減少する前提で策定した。
 今年度は地元住民らの利用促進運動もあり、4~8月で対前年比0・2%増と下げ止まりの傾向もあるが、「地域住民の理解と協力がないと今後、さらに利用者は減少する恐れがある」(県交通対策室)という。
 正式合意を受けて橋本昌知事、本間源基市長、竹内順一茨城交通社長が同日、会談。本間市長は「よかった。でもこれからが正念場」と、また竹内社長も「今後、安全運行とさらなるサービスを念頭に協力していきたい」と話した。橋本知事は「みんなで公共交通を残すという雰囲気を盛り上げていだだければ」と注文をつけた。

◇「やむを得ない」--利用者、経営安定に道険しく
 税金を投入した第三セクターでの存続が26日、決まったことに利用者からは「やむを得ない」との声が上がった。だが、地元でも「湊線に乗るのはまれ」と話す人もおり、利用者を増やして経営を安定させる道は険しそうだ。
 同日夕、ひたちなか市那珂湊駅から勝田行きの列車に乗った60代の女性は「なくなったら困ります。(市の)負担は仕方ないと思う」。那珂湊駅近くの実家に両親の看病に通っており、まさに生活必需路線だ。
 同じ列車に乗った県立海洋高校3年の男子生徒(19)も「地元の足として必要だ」と言いながら「車で移動する人も多いし、運賃もJRより高く、今後は厳しいかもしれない」。車内は学校帰りの高校生を中心に50人近くの客がいたが、通勤・通学時間帯以外になると、1両編成の列車に空席が目立つ。
 一方、那珂湊駅近くでバスを待っていたひたちなか市平磯町の大内静枝さん(75)は「市の負担はやむを得ないし、なくなれば不自由だ」と話すが「バスの停留所の方が近く、あまり乗らない」。一緒にいた同市の女性(73)も「なくなると不便だが、ほとんどバスにしか乗らない」と話す。

毎日新聞 2007年9月28日]