東急8000系 さよなら運転

東急8000系さよなら運転 東横線から姿消す

 東急電鉄(東京都渋谷区)は13日、東横線(渋谷-横浜駅、24・2キロ)から引退する8000系車両のさよなら運転を行った。長年主軸として活躍した労をねぎらうため、現場の運転士らが中心となって計画。始発の渋谷駅などに詰め掛けた大勢の鉄道ファンとともに別れを惜しんだ。
 8000系は昭和44年11月、同社初となる全長20メートルの大型車両として登場。省エネルギー性を向上させた界磁チョッパ制御装置や、1つのレバーで加速とブレーキを操作できるワンハンドルマスコンを導入した最新鋭車両だった。
 元住吉電車区宇治川武夫区長は「従来は技術と体で覚えた経験が必要だったが、デジタル化した8000系の登場で運転が短期間で習得できるようになった。40年近くも主軸として走った車両はほかになく、思い入れも強い」と話す。
 さよなら運転は電車区、車掌区、検車区でつくる元住吉三区会の発案で実現。中心となった運転士の稲葉孝二さん(37)が「沿線に生まれ育ち活躍を見てきた。最後の時期に運転士を務めていることに運命を感じた」。検車センターの多田弘之さん(39)も「見た目は平凡な通勤電車でも特別な愛着を持つ」と話した。
 13日はホームでの混乱を避けるため花束贈呈などのセレモニーは見送ったが、「歌舞伎塗装」と呼ばれる中央の黒色部分をL字型の赤帯で縁取りした“顔”に、職員手作りの特製ヘッドマークを取り付け花道を飾った。運転士は希望者が殺到したため「平等にくじ引きで決めた」という。
 臨時特急として渋谷駅を発進した8000系は中目黒、自由が丘、武蔵小杉、元住吉、菊名横浜駅のほか、直通する横浜高速みなとみらい線(横浜-元町・中華街駅)のみなとみらい、元町・中華街駅に停車。行き先表示器には「特急 元住吉」「特急 元町・中華街」というふだんでは見られない表示が現れた。
 8000系は計187両製造され、平成16年から5050系と置き換えが進み、東横線では今月7日に通常の営業運転を終えた。大井町線大井町二子玉川駅、10・4キロ)に残る5両1編成も年度内で引退する。
 しかし、これまでに伊豆急静岡県伊東市)に40両、インドネシアの鉄道会社に24両譲渡されており、リニューアルした外装で余生を送る姿を見る機会は残る。また、機器類が共通する8500系は田園都市線(渋谷-中央林間駅、31・5キロ)で35編成350両が健在だ。

産経新聞 2008年1月13日]